ハイキュー!!は、数冊単行本が出始めた頃に面白いなあと思って以後発売日に買ってたんですが、ちょうどその頃に一人暮らし始めたのもあって単行本を新居に持っていけなかったんですよね。
1年強化合宿あたりで一度切れてしまって、それからずっと読んでいませんでした。
この度完結したということで改めて電子版で全巻買って読んだのですが………この漫画メチャクチャ面白いやんけ………!!
スラムダンクを初めて読んだ時の興奮を思い出しました。
初心者同然の主人公が成長していく様が丁寧に描かれている。
他校のキャラクターにもちゃんとバックグラウンドがありみんな主人公の学校と同じくらい好きになれる。
そしてあまりにも現実とかけ離れている技などがなく世界観にのめり込める。本当に素晴らしいスポーツ漫画でした。
★★★ここからネタバレあるので気を付けてください★★★
私が一番好きなのは稲荷崎高校のセッター宮侑なんですが、やっぱりこれは宮の発言やプレーないし稲荷崎戦でここまでの烏野の積み重ねが綺麗に昇華されたというのが大きいんですよね…
日向はすごい才能を持ちながら環境に恵まれず、レシーブなど努力と経験の積み重ねでしか得られない能力を持っていませんでした。
一方影山は才能にも環境にも恵まれていましたが、その才能ゆえに孤独でした。バレーを教えてくれた祖父が亡くなり、姉は思春期でバレーを辞め、試合も彼が頑張るとすぐに終わってしまう。自分の能力が高い故に他人に求める理想も高く、コミュニケーション能力が低いこともあり次第に周囲から疎まれるようになっていきます。
もともとセルフィッシュな性格でしたが、何よりもバレーが好きな彼は、もう二度と孤独にならないよう、ずっとバレーができるよう、スパイカーに対して自分が全て合わせるという手段を取るようになります。
でも同じセッターで、同じようにセルフィッシュで、同じくらい才能のある宮は、彼の性格とプレーのちぐはぐさにすぐに気付きます。
彼は同じくらい才能に恵まれている双子の兄弟がいたこともあり、おそらく孤独の恐怖を知りません。自分が誰よりもバレーを愛し、努力することは大前提の上で、他人にも自分と同じレベルのプレーを当然に求めています。そうやって周囲から疎まれたとしても、自分の求めるレベルでプレーし何でも言い合える治がいる限り、バレーが出来なくなることはないからです。
だから、影山に対して、こんなに才能があり主張もあるのに、なにをそんなに怖がることがあるんだ?と問いかけるわけです。これが例の「おりこうさん」発言ですよね。別に宮は親切心でもなんでもなく煽りのつもりなんですけど。
そんな宮のプレーや「おりこうさん」発言を経て烏野に帰った影山は、次第にスパイカーに対する欲求が出てきます。
とうとう試合中にそのフラストレーションを爆発させてしまうわけですが、日向をはじめとする烏野のメンバーは彼から離れませんでした。
春高前の伊達工戦で、時に応え、時にぶつかり合える本当のチームになったわけです。
後で宮も言っていますが(44巻389話)、「好きなようにやっていいんだ、それでもこの人たちはついてきてくれる」と気付いた影山は、稲荷崎戦の中でよりスパイカーの才能を引き出すセッターへと成長していきます。
そんな中で私が一番好きなシーンなのですが、32巻280話の3セット目中盤に「最強の挑戦者」である稲荷崎の双子が変人速攻(双子速攻)を成功させ、281話に入ってブロックなども決め完全に流れが稲荷崎に傾きます。「最強の挑戦者」と呼ぶにふさわしい、烏野に似たガンガン新しいことをやって攻めるスタイルと、烏野(日向)に足りないそんなムチャを可能にする今までの積み重ねを烏野は目の当たりにして、敗戦ムードが漂うわけです。
そこでトドメのように、宮侑のファーストタッチでのセッティング<宮治のスパイクに見せかけたセッティング<エース尾白の強烈なスパイクという素晴らしいコンビネーションが稲荷崎で展開されます。
ブロッカーとして成長し好プレーを積み重ねてきていた月島も完全に振られます。
稲荷崎の挑戦と積み重ねが、同じプレイスタイルの烏野を完全に上回る、まさにそんな心を折る絶望的な1点が入ろうとしていたその時、日向が尾白アランのスパイクをディグするのです。
ここで本当に泣きました。
初心者同然で入部し、レシーブを最も苦手としていた日向が、1年生選抜での球拾いの経験を経て、全国トップチームのエースの、しかも素晴らしいセッティングでブロッカーもろくにいないまま放たれたスパイクを、拾ったのです。偶然なんかじゃない、才能だけではない、まさしく彼に足りなかった努力と経験の昇華がそこにあったのです。
結局このターンは稲荷崎の粘りの繋ぎで稲荷崎に軍配が上がるのですが、日向が素晴らしいプレーをしたのに決めきれなかったというただただ自責の念にかられる他メンバーを、日向はその太陽のような性格でパァッと照らしたんですよね。ここも主人公らしい希望の象徴で非常に良かったと思います。
この後の音駒戦、鴎台戦も因縁の昇華や更なる成長の足掛かりになるなど全ての試合描写に意味があり好きなのですが、稲荷崎戦の「主人公たちのこれまでのバレーを通じた成長のドラマの昇華」が私は一番好きです。
彼らは稲荷崎戦を経て、各々にとって最も高かった壁を乗り越えたのです。
そしてそれを意図的でないにしろ引き出した稲荷崎ないし宮兄弟(とくに侑)がキャラクターとして一番好きなんですよね…
そんな作品上の大役を務めながらも、本人はヤンチャでウケを狙わずにいられないお茶目な性格も良いですし。(あと顔も良い)
でも、侑は日向に対して烏野が飛雄を起こしてしまったって言ってますけど、きっかけを作ったのは他ならぬ自分だよね笑
ライバルを煽ったつもりが逆にライバルの才能を開花させてしまう、そんなところも良いではないか…。この2人はともに日本代表のセッターになりますし、高め合っていって欲しいですよね。
ちなみに及川もこの2人と似たところがありますが、彼はもっと泥臭いですよね。物怖じしない性格と、バレーを好きだという気持ちへの自信と、自分は努力の人だという諦めでもあり矜持でもある自負を持って我が道を突き進むタイプで、実はこの作品中誰よりも負けず嫌いな人だと思っているので(強気とはちょっと違う)、「全員倒す」を目標に掲げてそれを力技で実行しようとしているところ、流石だな!って思っちゃいました。
フゥーーーすごく稲荷崎語りしたかったのでスッキリしました!この作品はカッコいいセッターが多いので、及川徹の話も出来てよかった。
読んで頂いた方いらっしゃいましたら、ありがとうございます。